2008年04月30日
天国と地獄
またまた3週間ほど更新が滞ってしまいました。
前回、「またぼちぼちと更新しようかと思ってます」、などと涼しく言い放ったにもかかわらずこのありさま。こんな状態ではもはやブログとは言えません。
ただし私の場合、例えば2年間スポーツジムに行かないまま会費を払い続け、その後思い立ったようにまた通い始める、というようなことを平気でやらかしたりするほど気まぐれオレンジロードですから、何かをきっぱりとやめる、ということが出来ない性格のようです。いつまたアグレッシブな気持ちが復活するかもわからないので。だからこうして細々と続けていったほうがいいのでしょう。
さて、4月は平均以下の本数ではありましたが、ぽつりぽつりと新作を鑑賞しました。
意外な拾い物があったり、予想以上に酷い作品があったり、予想をはるかに超えた傑作があったり。まぁこう書いてみるといつもと変わらない感じです。いや、新作しか観ていないという意味では、実は結構レアなケースだったのかも。
先に書いたように、1本だけほとんど憤りの域に達しかかった作品がありました。
この映画には、オマージュや引用という形をとった慎ましさも、パロディという形をとった批評性もなく、野心も作家性も感じられませんでした。いや、そんな映画は世の中に掃いて捨てるほどあるのでしょうが、しかし、それを差し引いてもやはり、こんな映画がそれなりに客を集め、楽しまれるのだとすれば、それこそ“映画の死”という嘗て聞いたような言葉をふと漏らしたくなってしまいます。
観ている途中から、ここまで否定的な思いが込み上げてくる映画もそうありません。どれほど下らない物語でも、素人同然の稚拙な技術でも、難解で理解不能でも、このようには思わなかっただろうと、今は思います。
しかし、まだ私の中で、その理由をはっきりと書くことが出来ません。プロデューサーにも監督にも、もちろんその責任の一端はあるのでしょうが、何かもっと根本的な、そして構造的な部分にその理由がある気がしているのです。まぁどちらにせよ、今は私自身も明言出来ないので、ここではその映画の名前を出すことはしません(私の周りには、この手の映画を好んで劇場に足を運ぶような人は少ないでしょうが、そうではない人も読むのがブログですから)。
あるいは、私が同日に、今年のベスト級の傑作を観てしまったからなのか、と思わないでもありませんでしたが、そんな相対的な問題ではないはずで、その外国映画があまりにも素晴らしく、期待をはるかに超えた作品だったとしても、やはり関係ありません。一方が“映像”だとするなら、もう一方は“映画”だった、とでも言いましょうか。ほとんど無責任にそんなことを言いたくなるほど、この2本の作品は別物です。あらゆる意味で。
というわけで、傑作のほうは是非ご覧いただければと思います(といっても、公開からだいぶ時間が経っておりますので、観ている方も多いでしょう)。恵比寿では現在、2人のアンダーソン作品が公開されておりますが、私が言及したのは、アメリカ人のほうです。もう一方は未見なので、今はまだなんとも言えません。
2008年04月02日
ここ3週間の出来事
かなり久しぶりの更新になります。このブログで私の近況を確認している友人・知人は、いよいよ体でも壊したか?と思っていたかもしれませんが、私は相変わらず生きております。めっきり更新のペースが落ちてしまいましたが、仕事のほうが一段落し、若干余裕が出てきたので、またぼちぼちと更新しようかと思ってます。
更新していなかった約3週間の間にも、リヴェット特集や若松特集に通っていたので、3月はなんだかんだで16本の映画を観ました。やっと本来のペースになってきたか、という感じです。そのあたりも含め、この間に起こったいくつかの印象的な出来事を書いておきたいと思います。
■間近でビュル・オジェを見られたこと
私が参加したリヴェット特集はたった2本だけでしたが、その2本両方でビュル・オジェのトークがありました。彼女は『夜顔』そのままの雰囲気を漂わせ、フランス映画女優として、あるいはリヴェットのミューズとしての自負がそうさせるのか、独特なオーラを纏っているようでした。」
■『接吻』に絶句する
小池栄子の素晴らしさは筆舌に尽くしがたい、ということを改めて認識しました。あれほど恐ろしい笑顔を、ここ数年観ただろうか…。
■朋友・こヴィさん主催の映画上映会に初参加する
すでに7回目を数えていたようですが、遅まきながら初参加。よく知る映画仲間の顔もありましたが、多くは初対面でした。観た作品ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーのデビュー作『愛は死より残酷』。結果的に、私にとってファスビンダー“発見”の貴重な機会になりました。ヌーヴェル・ヴァーグの面々をはじめ、恐らく浴びるように観てきたであろう映画からの、いや映画史からの影響が色濃く、まだ青い果実のようにみずみずしい作品。やはり、それが面白いか否かには回収されない作品というものがあるのです。2度続けて観て様々に語りましたが、そこでも映画仲間による新たな視点を齎され、得るものも多かったように思います。次回からも出来るだけ参加させていただきます。
■『鉛の墓標』と『裸の銃弾』を間違えて観る
ともに未見の作品だった上に、“○の××”という四文字からなる似た題名を持った作品だったからか、『裸の銃弾』だと思いこんで観た作品が、実は『鉛の墓標』でした。こんな間違いはこれまでにしたことがなかったのですが、まぁ結果的に両方観られたのでよしとします。大和屋竺脚本(クレジットは、出口出)の『裸の銃弾』(上映時の題名は『やわ肌無宿 男殺し女殺し』)は、若松特有の“政治”や“革命”という要素がなく、あくまで殺し屋の復讐譚に徹していました。撮影も音楽も素晴らしく、今回観た若松特集の中で一番好きな作品だったと言えます。この映画、爆音で観たらさぞかし面白いだろうなと思います。
■またまた2008年ベスト候補が!『団塊ボーイズ』を観る
監督のウォルト・ベッカーはカリフォルニア生まれの40歳。フィルモグラフィーを観ると、日本では『アンラッキー、ハッピー』という映画がdvdで発売されているのみでした(劇場未公開)。
予告編のみを頼りに観た『団塊ボーイズ』でしたが、これは『俺たちフィギュアスケーター』の荒唐無稽な馬鹿馬鹿しさに匹敵するほどで、ラストの絵に描いたような勧善懲悪の図式性もさることながら、随所にちりばめられた前時代的な、というよりはむしろ普遍的なギャグが素晴らしく、しかもキャストは無駄に豪華。こんなアメリカ映画(といっても、2007年の全米興行収入ベスト10に入っています)が東京でも一館だけでひっそりと公開されるしかないのは昨今の状況をみれば致し方ないにしても、やはり大勢の観客で爆笑しつつ観るのが相応しいはずだと思わせる映画でした。『俺たちフィギュアスケーター』に涙して笑った方、必見。
さて、今週土曜日は恒例の花見 in 代々木公園です。実はその日、今年最大の映画的事件と言っても過言ではない、『アウトワン』の上映があることに気づき、我ながら何たる失策!と頭を抱えましたが、12時間30分に耐えられるかどうか、実はかなり不安だったということもあり、とりあえず5日は見送ることにします。悔しいですが、確実に観るであろう何人かの映画仲間の感想を聞いて、あまりにヤバそうだったら、翌週の分割上映にかけつけるかもしれません。