2006年02月02日

地震すら感じさせない圧倒的な画面力〜吉田喜重2作品を観る〜

ポレポレ坐より私が定時に仕事を終えることがあるとすれば、それはほぼ100%映画のためだと言えます。しかし滅多にそんなことがないだけに、定時にいそいそと逃げるように会社を出ることに抵抗が無いではありませんが、年に数回とはいえ映画のために会社を休んだりもするので、まぁ働いている分だけましかな、などと思いながら昨日は東中野に向かいました。
鑑賞したのは『血は渇いてる』と『BIG-1物語 王貞治』の2本です。

『血は渇いてる』は先日鑑賞した『ろくでなし』と同じく1960年に松竹で撮られた2作目にあたる作品で、撮影も同じく成島東一郎です。圧巻は芳村真理と三上真一郎によるダンスシーン(長いシークエンスショット!)とラストシーンで看板が剥がれ落ちる場面。ゴダールを意図的に模倣した『ろくでなし』とはまるで異なる印象を齎すこの2つのシーンは本当に素晴らしい。『ろくでなし』も面白かったですが、断然こちらの上だと思います。いろいろ調べてみると、『血は渇いてる』は封切り当時、大島渚の『日本の夜と霧』と併映されたようです。『日本の夜と霧』は未見なので早々に観たいと思いますが、確かにこの当時は日本においても“ヌーヴェルヴァーグ”が押し寄せていたということなのでしょう。

一方の『BIG-1物語 王貞治』ですが、これは王貞治が756号のホームランを打って世界新記録を更新した1977年に読売新聞社と東京読売巨人軍によって制作されたドキュメンタリーです。配給は東映。アニメ『新巨人の星』と併映されたと聞いただけでも、所謂吉田喜重的イメージとの乖離が認められます。ATGで配給していた『戒厳令』の後に、どうしてこのような仕事を引き受けたのか、理解に苦しむところではありますが、いざ観てみると、そのタイトルから受けて観客が期待する作品とはどこか異なっていて、世界新記録を更新した年に撮られたという事実が齎す、ある種の“祝祭性”を全く感じさせないという点に驚いた次第。ひたすらに自問自答を続けるような吉田喜重の切り口と竹脇無我のナレーションは印象として非常に暗く、ただの巨人ファンがこれを観たらいったいどんな感想を抱いたのか、そこには非常に興味が湧きます。誰もが見たであろうあの瞬間を、誰も見てはならない、幻のホームランだった、と結論づけるあたり、このような題材も吉田の手に掛かればこうなるのかと思わずにはいられず、妙に納得した次第。
本作は、昨年の特集上映時にも公開が予定されていましたが、恐らく権利関係の問題が解消されず直前で上映中止になったようで、つい先日より順次発売になったDVD全集にも収められていないことを鑑みると、今回の上映はほとんど奇跡的ではあります。もう一度上映されますので、興味のある方は是非是非。

鑑賞後、東中野駅に到着すると、何やら電車が遅れている様子。
「地震のため…」などというアナウンスが聞こえてきて納得しましたが、結構揺れたらしい東京都内の地下劇場でも、私は一切の揺れを感じませんでした。相当集中していたのか、あるいはその逆か、一作でも吉田作品をご覧になった方であれば、容易にご理解いただけるでしょう。

2006年02月02日 12:00 | 映画雑記
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Comments

>ヴィさま

mixi拝読しました(軽くコメントしておきました)。
確かに今学生だったら、絶対に毎日通ってますね。今週は日曜にもう一本観られればと思ってます。


Posted by: [M] : 2006年02月03日 12:39

『血は渇いてる』私もミクシに書きました。ダンスシーン&ラストはもちろんなんですが、あえて違うシーンを取りあげました。『BIG-1』はノーマークだったのですが、今日上映前に予告をやり、すごく気になってきた……。学生だったら19作品制覇したいのだが!


Posted by: こヴィ : 2006年02月03日 01:59
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