2005年06月15日

『隣人13号』の恐るべき貧しさ

原題:THE NEIGHBOR No.THIRTEEN
上映時間:115分
監督:井上靖雄

井上三太による原作を、私は一度も目にしたことがありませんが、映画は映画として評価されるべきだと思うので、そんなことはどうでもいい話です。あくまで本作がどのように映ったのかが肝要です。

さて、冒頭の小栗旬による“あえぎ声”には確かに虚をつかれ、その先を期待させもしましたが、蓋を開けてみれば鑑賞後私の脳裏に浮かんだのは、先の期待とは何の関係もない次元で、“新井浩文は素晴らしい”ということだけでした。なんと言う貧しさ!

中村獅童のキレた演技については、ほとんど想定されたものだったので驚きも感動もありませんでした。思うに、“キレる”という厄介な演技は、時代と共に変遷していくある種のパターンがあるのではないでしょうか。その典型どおりに“キレ”れば、観客は安心して観る事ができますが、それはつまり、つまらない演出だということに等しい。よって、私はやたらに“キレる”演出をしないほうが無難だと思うのです。本作の中村獅童は、そのいびつな表情のみ、悪くはないと思いましたが。

漫画を原作に持つこの映画は、別段漫画を超える出来栄えを示す必要などなかったのかもしれません。よって、これはこれでよかったのかもしれないのですが、好意的にみても、それが刺激的な映画体験だったとは言い難く、何故この映画を選んだのかを自問するという、極めて非生産的な状況に追い込まれていくのでした。

2005年06月15日 00:05 | 邦題:ら行
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