2004年08月01日

フレームサイズと『地球で最後のふたり』

タイのヤモリ土曜日は“フレームサイズを考える”と題した「boid.net」主催のオールナイトイベントに、本日はシネ・アミューズにて『地球で最後のふたり』を鑑賞し、帰宅後ヴィデオにて『コンクリート』を。先ほど観終えた『コンクリート』以外は、なかなか刺激的なフィルム体験をもたらしてくれました。

よほどの映画好き以外、実はあまり意識して観る人がいないのではないか、とも思われる“フレームサイズ”。しかし、映画とはこの問題を無視して成立しえないメディアだ、なんて今更私が言うまでもありません。それを意識しないでいることは簡単でも、映画の制度上、もしくは成立条件から言っても、その抑圧から逃れることなど決して出来ないからです。今回のイベントでは、青山真治監督、キャメラマンのたむらまさき氏、批評家の安井豊氏によるトークショーが催されましたが、約1時間にわたる彼らの話を聞いてみて感じたのは、制作側と観客側の絶対的な温度差です。彼らはフレームサイズに対する大きなこだわりがあり、というよりも、フレームサイズが映画そのものを左右してしまいもするのですからそれは当然と言えば当然なのですが、それに対し観客はと言うと、ヴィスタサイズを観ても当たり前過ぎて特に何も感じず、たまにスタンダードサイズを観ればなんだか画面が小さいなぁ、くらいの感想しか抱かないのでしょうし、もちろんそのサイズがどんな比率から成り立っているのかを知っている必要もないわけです。しかし、何故『ユリイカ』はシネスコで撮られたのか、何故『エレファント』はスタンダードだったのか、そんなことを考えてみると、それはそれで新しい映画の愉しみ方を絶対に提供してくれるはずで、新たな発見もあったりするのではないかと。少なくとも昨日のイベントで上映された4作品に関しては、常に“フレームサイズ”を意識しながら鑑賞することを予め義務づけられてもいたので、朝方には欠伸を連発させもしましたが、悪くない疲労感とかなりの充実感を得られました。

『箪笥』のおかげでありえないほどの飽和状態だったシネ・アミューズで観た『地球で最後のふたり』は、クリストファー・ドイルにしては“落ち着いた”キャメラワークで、緩やかなトラヴェリングだとか、要所要所に見られる斜め上からの俯瞰だとか、対象をドア越しにやや引き気味で、突き放したような印象すら与える的確なロングショットだとかを見るにつけ、ことごとくこちらを上手く乗せてくれるので、比較的長めの上映時間を全く感じさせず、見終えた後は、外の蒸し暑い天気のわりには、妙に清清しい気分で家路に着くことが出来ました。浅野忠信氏の演技も、もはや“国際的俳優”に相応しく堂に入ったもので、特に驚いたときやちょっと笑う瞬間の、ほとんど“素”との境界線があるか無いかのラインでの演技は本当に素晴らしかったと思います。ヴェネチアでの賞も納得です。

最後に『コンクリート』に関してですが、敢えて意味が通らないのを承知して言えば、これはもう映画ですらない作品と言いましょうか、あそこまで安易な発想とテクニックの不在とに犯されてしまうと、それがたとえ映画作品であっても、容易くは認めたくないという反動的な姿勢にならざるを得ません。これは専らプロデューサーの責任ではないかと思うのですが、この作品の持つ“レア度”が、ありえない付加価値を与えてしまい兼ねないな、とも思ってみたり。諸々の背景を一端無視した上で、本年度、この作品を超えるワーストは存在しないと断言しておきます。

2004年08月01日 13:22 | 映画雑記, 邦題:た行
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Comments

最初の投稿が本人だと言うのもなかなか笑えない冗談ですが、一応、初めての方のために、テストしておきます。こんな感じで表示されます。


Posted by: [M] : 2004年08月02日 19:51
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